top of page

フランスのドライストーンウォーリングと女教皇

  • 執筆者の写真: Kentarou Sakae
    Kentarou Sakae
  • 2025年7月31日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月12日


フランスのドライストーンウォーリング「ラ・ブリ」羊飼いのシェルター


今回訪れたフランスでは漆喰を使用した石積みと石だけを使った両方の石積みを見ることができました。


現在一般的となっているモルタルを使用した「練り積み」を「maçonnerie de pierre」(マソヌリ・ドゥ・ピエール)と言います。英語のmasonryと同じ語源を持っています。ドライストーンウォーリング(空石積み)はフランス語で「pierre sèche」(ピエール・セッシュ)。ピエールが「石」、セッシュが「乾いた」で 直訳すると「乾いたピエール」です。



「Dry Stone Walling」、「pierre sèche」、日本語の「空積み」も、もともと当たり前だった石だけを使った石積みの反対語として、湿式の登場(約5000年前以降)を前提にしているわけで、語源的にも歴史的にも「後から生まれた言葉」と言えます。古い技術を指しているのに新鮮な響きに聞こえるのは「ナチュラルワイン」にわざわざ「ナチュラル」がついているのと似ているかもしれませんね。



「ドライストーンウォーリング」は2018年にフランス、クロアチア、キプロス、ギリシャ、イタリア、スロベニア、スペイン、スイスの8か国による共同申請で「UNESCO無形文化遺産」に登録されています。さらに2024年にはアイルランドも追加登録されています。


日本ではイングリッシュガーデニングブームの流れから「ドライストーンウォーリング」に興味を持った方が多く、「ドライストーンウォーリング=イギリス」のイメージをお持ちの方が多いですが、UNESCO無形文化遺産の共同申請には参加していません。EU離脱(Brexit)の影響で欧州共同申請に参加できなかったとも言われています。



今回、自身も遺跡の修復などに携わる石積み職人である、クロファンティーヌのオリヴィエが色々なドライストーンウォーリングを案内してくれました。



クロファンティーヌと同じフォジェールにある、200年程前の地元の人の暮らしぶりが保存、展示されているLes Mates Basses(レ・マット・バス)にも沢山のドライストーンウォーリングの技術が展示されています。


その中にL'abri「ラブリ」と呼ばれる「羊飼いのシェルター」がありました。羊を放牧するための石積みはイギリスでも沢山見ましたが、壁の中に人が入れる半円形の壁が組み込まれているものは初めて見ました。


羊飼いが風雨や日差しを避けながら、羊の群れを襲うオオカミを見張るためのabri「シェルター」だそうです。持ち送り工法やコーベリング工法 (Corbelling)と呼ばれる方法で少しずつ石をずらしながら積み上げられた半円が印象的です。


凝ったデザインというよりは機能のための形です。オオカミを見張る当時の羊飼いの姿が目に浮かびます。ピレネー山脈が語源のラブリーな牧羊犬「ピレネー犬」も一緒にラブリの中にいたかもしれませんね。


他にもイギリス式の壁がひっくり返ったような様式の壁もありました、縦に並んだ基礎石は水捌けを良くするための工夫だそうです。フランスの200年前の農村の石積みの中には、プリミティブ(原始的)な要素の中に、機能や工夫の先にある美しや面白みを感じます。


Claude Froidevaux(クロード・フロワドヴォー)のドライストーンウォーリングも印象的でした。今年87歳になる女性ドライストーンウォーラーが積み上げた石積みです



クロードさんは元小学校教師で定年退職後にドライストーンウォーリングの世界へ、現在までPierres Sèches(ドライストーンウォーリング)協会の副会長・現場責任者として29年にわたって石を積み続けているそうです。


若者や障害者たちに技術を伝えながら「これは仕事ではなく使命だ」と語り、フランス空石積みの「女教皇」(la papesse))と呼ばれる存在だそうですが、日本語での「女教皇」の硬い響きとは違って、彼女の石積みは優しい雰囲気を纏っています。


他にもMoulins de Faugères(フォジェールの風車)の低い壁やクロ・ファンティーヌの畑にもドライストーンウォーリングを見る事ができました。台所の石を貰に行くつもりで行ったフォジェールは思いがけず、石積みのメッカでもありました。 instagramで記事についての動画をご覧いただけます。

コメント


bottom of page